栃木県岩舟町 「岩舟町文化会館 コスモスホール」
その中で小山〜佐野間は、とりわけ緑豊かでのどかな一帯です。
その小山〜佐野間のとある地点、岩舟町付近を走っていると、突然道路の北側にサイのツノのような突起が見えるのをご存じでしょうか。
思わず「あのツノは何だ!?」と、それほどの解りやすいシンボル性、そして一度は刮目して見てしまうインパクトを放つこの造形物。
その正体は『コスモスホール』と呼ばれる、クラシック音楽を主な用途とするれっきとした岩舟町の文化会館なのです。
平成六年、栃木県岩舟町に多目的に使用できる音楽ホールが建設、町花のコスモスにちなんで『コスモスホール』と命名されました。
前述の特徴的な造形は、岩舟町出身とされる慈覚大師円仁が中国に渡ったときの遣唐使船と、岩舟町の「舟」をシンボライズしたものとされています。(ちなみに町名は、町の中心に座する岩船山が由来。またその岩船山という名の由来は、山の形が船の形に似ており、かつ岩肌が各所に露出しているところからとのこと)
実際に訪れて真っ先に気づくこと、それは想像以上にバリエーション豊かな意匠に彩られている点です。
遠巻きに眺めている時点では、きわめてプリミティブな造形の組み合わせという印象が強いですが、一旦エントランスをくぐれば、そこはまるで別の世界がある。建築面・意匠面でのさまざまな表現方法が(若干節操なしに思えるほど)多数に取り入れられ、視界の随所に飛び込んできます。
一見統一感のない仕掛けの羅列のようですが、全体として違和感なくまとまって見えるのは、その意匠の「舟・波・海」など連想されるコンセプトに一貫性があるからなのでしょう。
若干繊細さと大味さが戦っている面も感じられますが、ここまでシンボリックに意匠された建築物は見ていて気持ちがいいもの。
町のシンボルとして、常に町の人々の目に映るモノ… それがどのような用途であれ、まさに建築物にしてみれば「建てられ」冥利に尽きるといったところでしょう。
また忘れてならないのが、音響効果に定評のあるシューボックス型の大ホールを備えていること。こ
れ大事なことです。高い機能性も持ち合わせているからこそ、前述のような意匠が活きる。
まさに大人の遊び心が効いている、そんな建築物なのです。
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■久保講堂
■竣工:1994年
■設計:神谷五男
■所在地:栃木県下都賀郡岩舟町静2303
■ホームページ:http://www.town.iwafune.tochigi.jp/cosmos/