建築探訪・写真・ウェブなどに関して徒然書き綴る私的実験室的なサイト
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栃木県宇都宮市 「栃木県立美術館」

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栃木県立美術館は、約四十年前、一九七二年の開館です。

ガラスに覆われた外壁、中央に据えられた屋外展示場など数々の意匠に、当時は結構な話題でした。

なかでも定評があったのは、屋内の展示スペース、見る人を飽きさせない絶妙な動線と、主張がありながら作品を埋もれさせない構成は今も色褪せることなく、質の高い設計意図を感じさせます。

さすがは、空間構成を得意とする建築家、川崎清といったところでしょうか。

後に増築された右側部分の常設展示館も、見やすくて飽きのこないプランニングを実現しています。

ガラスの塔の前にそびえるスズカケの大樹は、館が建てられる以前からあったそうです。

この大樹とこれから出来上がる美術館とのバランスが、設計の要となったのではないでしょうか。

大樹の存在感を打ち消すことなく、控えめに見えながら、自己主張も忘れないという、計算高い印象をその建物から受けます。

建築物の造作に加え、大樹や堀のある屋外展示場、そしてガラスに映る風景などの要素をバランスよく配した演出は、緻密な計算のもとに成り立っている良い例だと思います。

ただ個人的に誤算と言えることは、堀の部分と、建物のガラスやメタルの部分がくすんでいるせいであまり演出の妙が活かされていないことでしょうか。

直線で構成されたデザイニング、また玩具の様な複雑さを呈した、極めて人為的な空間は、小さな汚れも一層目立たせてしまうようです。

景観の精度を維持するのは、思ったより労力がかかることなのだということを実感します。

栃木県立美術館。近年は宇都宮美術館の追い打ちもあり、年を重ねるたびに来客者数が減少しているように思われます。

果たしてそんなに魅力のない場所なのでしょうか‥美術館は、器である建物、いわゆるハードの出来もさることながら、展示というソフトの充実によってもその評価が別れてしまいます。

以前、少なくとも二十年以上前の頃は、前衛的で大胆な企画が度々行われ、見に来る人のモチベーションも高かったと言われています。

ですが現在の状況は、どこか煤けて寂しい気も。

再び活気にあふれ、常に人でにぎわう美術館となる日を願うばかりです。

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■栃木県立美術館
■竣工:1972年
■設計:川崎清
■所在地:栃木県宇都宮市桜 4-2-7
■ホームページ:http://www.art.pref.tochigi.lg.jp/

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