建築探訪・写真・ウェブなどに関して徒然書き綴る私的実験室的なサイト
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栃木県日光市 「宇都宮市水道資料館」

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それは静かに歴史を語る

栃木県の国道119号線(日光街道)を宇都宮から北に約20キロメートル強。

日光市今市地区の市街地北部にある浄水場施設の敷地内、道路側の一角に欧風木造建築がさりげなくたたずんでいるのが見えます。

白壁に赤い半切妻屋根、そして円形の副塔というヨーロッパのコテージスタイルを思わせる外観からモダンな印象を見る者に与えますが、実は長い歴史を経て今に残る建築物だということはあまり知られていません。

時は一九一六年、大正時代、日本全土において都市の近代化が加速する時代。

さまざまなインフラが敷設され人々の生活環境を大きく変える、まさに変革の時代です。

宇都宮市も例にもれず、この年「水道」が創設、今市浄水場から戸祭配水場に向けて送水が開始されました。

この送水の開始に先立つこと三年前の一九一三年、日光の中禅寺湖を水源として水道の創設工事が着工、この工事により建設されたのが今市浄水場です。

そして浄水場の管理事務所として一九一四年、この建物が建設されました。

それから七十数年間、第二次世界大戦時の空襲や一九四九年の今市地震にも耐え続け、宇都宮の水道を支えてきたこの建物も一九八八年、隣に建設された新管理事務所にその任を譲り、管理事務所としての役目を終えたのです。

その後、市民などから「日本で三十一番目に古い浄水場の管理施設であり、かつ大正文化を色濃く残す歴史的建築物である」として、その保存を望む声が起こり、復元・保存工事が実施、一九八九年に水道資料館として生まれ変わりました。

現在でも内観は木板の床に漆喰の壁面、歴史的資料などは黄色がかった照明に照らされ、微妙な具合に歴史を感じられる空間となっています。

予備知識なしで見ると、立地などもあってか、風景に埋もれてしまう印象は否めず、正直大きな存在感を感じさせる建築物ではありません。

ですがこのような歴史と事実を知った上で改めてこの建物と向き合ったとき、人々の生活基盤にとって極めて重要な「水」を七十数年間も絶えず守り通し、またそれを自慢しひけらかすことなく「当然のことをしたまで」とただ寡黙にたたずむ、縁の下の守り神としての静かな誇りを感じるのです。

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■宇都宮市水道資料館
■竣工:1914年
■所在地:栃木県日光市瀬川1334-1
■ホームページ:http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/josuido/josuido/suidoshisetsu/002828.html

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