ちょっとレアな淡水魚専門水族館「栃木県なかがわ水遊園 おもしろ魚館」
二〇〇一年、栃木県北東部に位置する湯津上村の那珂川沿いに「栃木県なかがわ水遊園」が開園しました(現在は大田原市)。
県内では珍しく水族館「おもしろ魚館」が併設されているということで、当時は何かと話題にのぼったものです。
水遊園の象徴とも言える、十二面体のガラスドームを冠した「おもしろ魚館」は、周辺の緑地とのコントラストなども相まり、訪れる者にインパクトを与えています。
穿った見方をすれば、自然豊かな河川敷の景観に極めて人工的なオブジェクトが座している、と言えばそれまでなのですが、とはいえその存在感は周辺環境との調和、そしてミスマッチの絶妙なバランスを保ちながら成り立っており、広大な自然の景観を損なうことなく、また埋もれることもなく、それらとともに一つの個性的なランドスケープを形成させているように思えます。
その成功は、ひとえに企画・設計時において建築物と水との関係を最も重視し、それについてよほどの緻密な検討と計算が行われたからなのでしょう。
水面の色彩、水の持つ透明感を建築物に活かし、また河川に張り出した親水の大胆な計画など、中途半端にまとまらず一定のベクトルに徹底したテーマ性が小気味良く、そして那珂川との景観的融和を見事に実現させています。
エントランスをくぐり内部を見渡すと、外とは一線を画した別世界。
ガラス・木材・コンクリートなどをふんだんに使用した空間は、まるで石や砂、植物が多種多様に入り混ざった川の中のようです。
この造形にはさまざまな捉え方があると思いますが、屋内にありながら外にいる感覚を演出しつつも、内外の世界の違いを明確に表現する効果が多分に発揮されている、という感じでしょうか。
また内部からドームを見上げると、その骨組みの細さに驚かされます。
内外を隔てる薄皮一枚が膜のようであり、高度な技術力によって支えられているのが分かります。
これだけでもこの建築物を見る価値アリ。
ドーム内部は熱帯がテーマとなっており、さらなる非日常空間が訪れる者を別世界に誘っています。
夢と期待感を与える「非日常」というバリューを実現し、子どもから大人まで楽しめる観光地として成熟を迎えつつある「栃木県なかがわ水遊園」。
維持費、アクセスなど対効果の面で課題点を指摘される声も確かにあるかもしれませんが、地元にこのような建築物があることが少しでも誇りに思えるならば、その建築物はそこにある意義があるのではないでしょうか。
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■栃木県なかがわ水遊園 おもしろ魚館
■竣工:2001年
■設計:古市徹雄都市建築研究所・佐藤総合計画特定設計
■栃木県大田原市佐良土2686
■ホームページ:http://www.aqua.pref.tochigi.jp/