建築探訪・写真・ウェブなどに関して徒然書き綴る私的実験室的なサイト
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栃木県栃木市 「星野遺跡地層たんけん館」

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栃木市と葛生町の境付近、人気ない森のあぜ道をさらにさらに登って行くと、そこにひっそりたたずむ建物「星野遺跡地層たんけん館」通称「ほしのタイムポケット」があります。

 

昭和四十年、栃木市星野町で「亀の子型石核」という石器が発見されたのをきっかけに、星野町の遺跡発掘調査が開始されました。深さは十メートルにわたり、旧石器時代のさまざまな石器や縄文時代の住居跡など、人間の生活を確認できる十三の文化層が発見されたそうです。なかには八万年以前の石器も見つかり、当時、日本最古の遺跡ではないかと注目を集めたことも。発掘調査は実に十三年間にも及んだといいます。

そして発掘調査終了後に遺跡は整備され、平成十一年七月、発掘時の地層断面をそのまま直接展示できるよう「星野遺跡地層たんけん館」が建造されました。

 

 

それはそこに馴染みながらも、心地よい好意的な存在感を放っていました。地中に下半分を埋めた外観、無彩色な色調とシンプルな幾何学的ラインで構成されたデザインは、過度な自己主張の要素を廃し、あくまで周辺の緑との調和を最優先させることに徹しています。内部においても、トレンチ(試掘溝)を屋内に入れてしまったかと思わせるような演出に、不思議な空間感覚を覚えます。自然の土と緑、そして人工的な空間がピンスポットで交錯するジャンクションであり、いわば水族館ならぬ「地」族館といったところでしょうか。エミリオ・アンバースの建物のような、大地と建物の共生を感じさせる新鮮な刺激が嬉しい建物です。

 

 

最後に惜しい点をいくつか。何はともあれアクセスが非常に不便であること、地層という歴史が造りあげた産物以外の展示物が少々物足りないところ、この二点が心残りです。建築物の造形に興味なく、遺跡の地層に造詣が深くない者にとっては、行くのも着いてからも若干ツライ場所かと思われます。そして無人の展示館はちょっと怖い面も。建物とは、人が利用して初めて活かされるもの。ソフトとハードの両立が今後望まれるところです。

■星野遺跡地層たんけん館
■竣工:1999年
■設計:戸尾任宏・広谷純弘・建築研究所アーキヴィジョン
■住所:栃木市入舟町7-26
■ホームページ:http://www.city.tochigi.lg.jp/hp/page000001000/hpg000000108.htm

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  • この建物は、御承知のように土石流危険地帯の真ん中に
    建っています。そこでこの建物も千年位で流されて、無
    くなる可能性が有り得ます。この地点からは顕著な人手
    の入った遺物が、出ていないと聞いていますが、土石流
    危険地帯の真ん中を、東北大学等が当時、あえて捜索し
    た意図は、私には良く判りません。

    >エミリオ・アンバースの建物のような、大地と建物の
    >共生を感じさせる新鮮な刺激が嬉しい建物です。

  • コメント誠にありがとうございます。
    この建物について調べる際、数々の懐疑的な点があることなど
    ご指摘に関してある程度認識しておりましたが、
    建築的な観点において、現況の意匠造形や展示物の効果的な
    演出方法には見るべき点があると思い、書かせていただいた次第です。

    ですが確かに、旧石器遺物?発見の一報からこの建物が建てられるまでの
    紆余曲折を鑑みれば、この建築物の説得力というか、
    そもそもの意義において、個人的にも疑問を感じてはいます。
    建物自体はとても妙があると思えるだけに…的外れな返答で申し訳ありません。

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