真岡鐵道 益子駅
益子の町にマッチした駅
栃木県の南東部、陶芸の里として全国的に有名な益子町。
その中心市街地に、二つの尖塔が特徴的な建築物「真岡鎧道益子駅舎」が停みます。
石材とコンクリート・切妻の瓦葺きで構成された、繊細さと重厚感を併せ持つ「和」の躯体に、シンメトリックに立ち並ぶ二つの尖塔が加わることで、益子駅舎は一帯の景観にクセの効いたリズムと刺激を与えています。
しかし不思議なことに、その水平と垂直の線が大胆に交わり合う外観はどの角度から見ても個性的ですが、決して挑戦的でも挑発的でもありません。
派手さと地味さの両極を巧く重ねて内包することで、結果心地の良い好意的な斬新さが醸し出されています。
陶芸の里・益子の駅として
陶芸ならではのイメージ、いわゆる「わびさび」を感じさせる駅舎ではありません。
(益子焼の本領が「わびさび」かどうかは横に置いときます)
建て替えられる前の木造駅舎の方が「それらしかった」という意見が(現在の駅舎の評価は別にして)あるのも理解できます。
しかし瀬戸や有田と並び称され、年間多くの観光客が訪れる観光地の玄関口として、また周辺観光の出発点としての役割を担う上で、この益子駅舎の建築計画はなかなかに「らしい」ものではないかと思います。重厚な瓦葺き、そして木と石が益子の歴史と伝統を物語り、二つの尖塔が観光地としてのオープンな姿勢をシンボライズする…。
まさに益子がどのような町であり、この先どのような町を目指すのかを端的に語っている建築物、というのはちょっと言い過ぎでしょうか。
駅機能の他に観光協会、保健・福祉施設を備える益子駅舎ですが、他にも地域活性や観光地化の一環としてさまざまな活用の試みがなされています。その例として、毎年「街に灯りを」をテーマに、十二月上旬から一月中旬の夜間には、駅舎全体のライトアップと周辺の木々に電球総数約一万個のイルミネーショ ンが飾られます。また期間中、ロータリーに地元の陶芸家が制作したオブジェが置かれるといいいます。
益子焼という観光資源のみに寄り掛からず、住民の手による地域活性が駅舎を中心に広がっています。
地域住民の意識というソフトと、益子駅舎というハードとどのように絡んで展開を見せるのか、今後もたいへん楽しみです。
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